「AIにスライドを作らせても、結局ぜんぶ手直しになる」。
そんな経験、ありませんか?
会議の前日、議事録をもとにプレゼン資料を1から作る。フォントを揃えて、配色を整えて、図形の位置を微調整する。その作業に2〜3時間かけた頃、ふと「AIに任せたらどうなるか」と試してみる。生成されたのは確かにスライドっぽい画面だった。でも、テキストをクリックしても選択できない。図形も移動できない。「あ、これ画像か」と気づいた瞬間、ため息が出る。
その悩みが、2026年4月についに解消されました。
米Googleは4月1日(現地時間)、Google スライドのGeminiをアップデートし、編集可能なスライドを生成できるようになったと発表しました。従来、Geminiが生成するスライドは画像形式でした。
これは地味なようで、実は大きな転換点です。「AIが作ったスライドはそのまま使えない」という前提が崩れた瞬間だからです。
この記事では、今回の新機能の仕組みから使い方、他ツールとの比較、日本語対応の現状まで、必要な情報をまとめて解説します。
- そもそも何が変わったのか?「画像生成」と「編集可能なスライド」の違い
- 新機能でできることを全部まとめる
- 実際の使い方:Googleスライドでの操作手順
- 利用条件と日本語対応の現状
- 他ツールとの比較:Geminiのスライド生成は何が違うのか
- エンジニアとビジネスパーソン、それぞれの活用シーン
- 注意点とデメリット:「実用的」の裏側にある壁
- まとめ:「AIが作ったスライドは使えない」という常識が変わり始めた
そもそも何が変わったのか?「画像生成」と「編集可能なスライド」の違い
これまでのGeminiスライド生成は「見た目だけ」だった
少し前まで、GeminiがGoogleスライドで生成するスライドは、技術的には「画像」でした。見かけはスライドっぽくても、内部的には1枚の画像データとして挿入されていました。
つまり、こういう状態です。
- テキストをクリックしても、カーソルが入らない
- 図形をドラッグして移動できない
- フォントや色を変えられない
- スライド全体の配色テーマと合わせることができない
結果として「叩き台としてAIに作らせたのに、ゼロから作り直した方が早かった」という体験が続いていました。
新機能は「オブジェクトとして生成」する
今回のアップデートで、GeminiはGeminiが既存のデッキを安全に分析し、そのスタイルに合わせた動的なレイアウトやデザインを作成する完全編集可能なブランドマッチのスライドを生成できるようになりました。
具体的に何が変わったかというと、生成されるスライドの構成要素がすべて「オブジェクト」として扱われるようになったということです。
テキストボックスはテキストボックスとして、図形は図形として、グラフはグラフとして生成される。そのため、通常のGoogleスライド操作でそのまま編集できます。
手書きスケッチやデータ表を渡せば、編集可能なグラフや図に自動変換してくれる機能も加わっています。AIが作ったスライドを「素材」として扱える時代になったわけです。
新機能でできることを全部まとめる
既存デッキのスタイルを自動で読み取って新スライドに適用
スライド生成のアップデートにより、Geminiに対して「このデッキの残りのスライドに色を合わせて」「もっとミニマルにして」といった指示で、新しいスライドのテーマや配色を既存スライドに揃えることができるようになりました。
例えば、会社のブランドカラーで統一された既存デッキがある状態で、「競合比較のスライドを1枚追加して」と頼むと、Geminiが既存のスライドを分析して、同じフォント・配色・レイアウトスタイルで新しいスライドを生成してくれます。
Gmail・Drive・Webから情報を引っ張ってスライドに組み込む
新しいスライドを作成する際に、ファイル・メール・Webから情報を引っ張るようGeminiに指示でき、Geminiが関連する詳細を自動的に見つけて新しいスライドに組み込んでくれます。
使い方としては、@ファイル名 のメンション形式でDriveのファイルを指定できます。「@先週の会議メモ と @プロジェクト計画書 を参照して、次のアクションアイテムをまとめたスライドを作って」という自然な日本語での指示が通ります(英語先行ですが、後述)。
自然言語でのデザイン調整
Slidesでは「make this match the colors of the rest of my deck」や「make this more minimal」といった指示でスライドを編集でき、スケッチやテーブルを編集可能なグラフや図形に変換することもできます。
「もっとシンプルにして」「タイトルをもっと大きくして」「背景を白にして」といった曖昧な指示でも、ある程度意図を汲んで調整してくれます。これまでのようにメニューを探し回る必要がなくなります。
フルデッキ一括生成(近日対応予定)
Googleは将来的に「5枚のスライドを作って(東京旅行用に)」といった単一のプロンプトからプレゼンテーション全体を生成できる機能を追加予定で、Geminiがワークスペースのデータを使って「ブランドに沿った完全なプレゼンテーションを通常より短時間で作成」するとしています。
「5枚のスライドを作って」で完成品が出るフルデッキ生成は、まだ「coming soon」の段階です。現時点では1枚ずつの生成がメインですが、この機能が追加されると資料作成の工数が大きく変わります。
実際の使い方:Googleスライドでの操作手順
基本的な使い方(スライド内からGeminiを呼び出す)
操作はシンプルです。
- Googleスライドでプレゼンテーションを開く
- 右上の「Geminiに相談」ボタン(星型アイコン)をクリック
- 右側にサイドパネルが開く
- プロンプトを入力して送信
- 生成されたスライドをプレビューで確認し、「挿入」または「置換」
また、既存スライドのデザインやコンテンツを直接編集・改善したい場合は、「このスライドをシンプルにして、テキストを減らして画像を追加して」のようにプロンプト欄に入力する形で操作できます。
効果的なプロンプトの書き方
AIに対する指示(プロンプト)の質が、出力の質を左右します。以下にシーン別の例を挙げます。
競合比較スライドを作りたい場合
競合A・B・Cと自社製品の比較スライドを作って。 機能・価格・サポートの3軸で比較する表形式で。 このデッキの配色に合わせて。
会議資料から要点スライドを作りたい場合
@先週のキックオフ会議メモ を参照して、 プロジェクト概要・主要マイルストーン・担当者割り当ての3点を まとめたスライドを1枚生成して。
既存スライドをリデザインしたい場合
このスライドのレイアウトをより読みやすくして。 テキストを箇条書きに整理して、余白を増やして。
利用条件と日本語対応の現状
使えるプランと現時点での制限
この機能を使うために必要な条件をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象プラン | Google AI Pro / AI Ultra / Gemini Alpha(ビジネス向け) |
| 無料Googleアカウント | ❌ 利用不可 |
| 提供言語(ロールアウト開始時) | 英語を含む一部言語 |
| 日本語対応 | 対象外(順次対応予定) |
| 提供方式 | 段階的ロールアウト(最大15日) |
| 開始日 | 2026年3月31日(Workspace向け)、4月1日(個人向け) |
グーグル・クラウド・ジャパンはITmedia AI+編集部の取材に対して「日本語についても順次対応予定。ただし詳細な提供時期は準備が整い次第発表する」と回答しています。
日本語対応はまだ未定です。ただ、Geminiのサイドパネル自体は以前から日本語で利用できており、既存機能については日本語プロンプトでもある程度動作します。新しい編集可能スライド生成についても、英語環境での動作確認後に日本語対応が順次展開される見込みです。
旧機能との変化点
従来あった「画像として美化(Beautify as Image)」機能は、Slideメニューの下に移動しました。削除されたわけではなく、使い続けることはできます。ただし、新機能の「編集可能なスライド生成」がデフォルトの動作になります。
他ツールとの比較:Geminiのスライド生成は何が違うのか
AIスライド生成ツールの比較表
| ツール | 出力形式 | 編集可否 | Googleスライドとの親和性 | 主な強み |
|---|---|---|---|---|
| Gemini in Slides(新機能) | 編集可能なスライドオブジェクト | ✅ フル編集可 | ◎ ネイティブ統合 | 既存デッキとのスタイル統一、Drive/Gmail連携 |
| PowerPoint + Copilot | 編集可能なPPTXスライド | ✅ フル編集可 | △ PPTX形式 | Teams・Word連携、企業データ活用 |
| Gamma | Web形式(PPTXエクスポート可) | ✅ 独自エディタで編集可 | △ エクスポート必要 | デザイン品質が高い、素早い生成 |
| ChatGPT(単体) | テキスト・アウトライン | ❌ スライドは非生成 | ❌ 別ツールが必要 | 構成案・コンテンツ生成に強い |
| Canva AI | Canva形式(PPTX可) | ✅ Canvaエディタで編集 | △ エクスポート必要 | デザイン豊富、ブランドキット対応 |
Geminiの最大の強みは「Googleスライドの中に最初からいる」という点です。ツールを乗り換える必要がなく、作業を中断せずにAIの助けを借りられます。すでにGoogle Workspaceを使っているチームにとっては、追加コストなしでそのままスライド生成が使えるのはかなりの利点です。
一方、PowerPoint + Copilotは、すでにMicrosoft 365環境で動いているチームには同様に強力な選択肢です。企業のSharePointや Teams上のデータを活用してスライドを生成できます。
GeminiはGoogle AI UltraおよびProの購読者への提供を開始しており、英語でグローバルにGoogle Docs、Sheets、Slidesで利用でき、Google Driveは米国向けとなっています。
エンジニアとビジネスパーソン、それぞれの活用シーン
エンジニア向けのユースケース
技術仕様や設計資料のスライド化
設計ドキュメントやREADMEをDriveに保存しておき、「@設計書v2 を参照して、システム構成の概要スライドを作って。対象者は非エンジニアの経営陣」と指示すれば、技術的な内容を一般向けにかみ砕いたスライドを自動生成してくれます。
インシデント報告書のプレゼン化
障害対応の振り返り会議で使うポストモーテム(事後分析)資料は、MarkdownやドキュメントからGeminiに投げるだけでスライド化できます。原因・影響・対策・再発防止策という構成を指定すれば、そのままの構成で生成されます。
スプリントレビューの定型スライド
毎スプリント同じ構成のレビュースライドを手で作っていた作業が、テンプレートとGemini指示の組み合わせで半自動化できます。
ビジネスパーソン向けのユースケース
提案書・企画書の初稿作成
営業提案や社内企画は、まず箇条書きで要点をメモしておき、Geminiに「この内容を元に提案資料を5枚で作って」と頼むのが効率的です。デザインの心配をせずに内容の検討に集中できます。
会議後の議事録→アクションアイテムスライド
Googleミートの文字起こしや会議メモをDriveに保存しておけば、「@議事録 を参照して、決定事項と次のアクションを整理したスライドを作って」で即座に共有用資料が作れます。
定期レポートの自動化
月次・週次の報告スライドは、構成が固定されていることが多いです。スプレッドシートのデータと過去のスライドテンプレートを参照させることで、毎回同じ作業を繰り返す手間がなくなります。
注意点とデメリット:「実用的」の裏側にある壁
今回の機能は確かに実用的ですが、いくつかの注意点があります。
1. 日本語は現時点で対象外
前述の通り、新しい編集可能スライド生成機能はまだ英語先行です。日本語対応の時期は未定で、グーグル・クラウド・ジャパンも「準備が整い次第」と回答しています。日本語環境での利用は、今後の対応を待つ必要があります。
2. 有料プランが必要
Google AI ProまたはUltraのサブスクリプションが前提です。個人の無料Googleアカウントでは利用できません。Google Workspaceの企業プランであれば、Gemini Alphaのビジネスプランが対象です。
3. 出力品質のばらつき
AIが生成するスライドのクオリティは、プロンプトの質と既存デッキの内容に依存します。プロンプトが曖昧だったり、参照するデッキのデザインが複雑すぎたりすると、期待通りにならないケースもあります。あくまで「叩き台生成ツール」として位置付け、最終調整は人が行う前提で使うのが現実的です。
4. 機密情報の取り扱いに注意
GmailやDriveのファイルを参照してスライドを生成する機能は、個人情報や社外秘情報が含まれるファイルとの連携では慎重な判断が必要です。企業利用の場合は、情報セキュリティポリシーに照らした運用ルールを先に整備しておくことをおすすめします。
5. 既存の「画像として美化」機能の移動
旧機能が削除されたわけではありませんが、メニューの位置が変わっています。既存のワークフローで「画像形式での生成」を使っていた場合は、スライドメニューから操作するよう切り替えが必要です。
まとめ:「AIが作ったスライドは使えない」という常識が変わり始めた
今回のGeminiアップデートを一言でまとめると、「AIがスライドを作る工程に人が介入できるようになった」ということです。
これまでは「AIに任せるか、自分で作るか」の二択でした。AIが作った画像形式のスライドはそのまま使えず、結局人が作り直す。その前提が崩れたことで、AIを「素材を出してくれるアシスタント」として活用できるようになります。
エンジニアの視点で言うと、設計や仕様のドキュメントが増えるほど、その内容をスライド化する手間も増える。その手間の大部分をGeminiが引き受けてくれるなら、本来集中すべき「内容の深掘り」や「ストーリー構成」に時間を使えます。
日本語対応はまだ先ですが、まずは英語環境で試してみて感触を掴んでおくのが、先んじて活用できる一番の近道だと思います。AI Proプランへの加入が前提になりますが、プレゼン資料作成に時間を取られているなら、費用対効果は十分考えられます。
「AIが作ったスライドを手直しした時間、何時間になるだろう」と思い当たる方は、ぜひ今回のアップデートをチェックしてみてください。