私はエンジニアとして長年様々な開発ツールを使ってきましたが、2025年に入ってAIコーディングツールの進化は目覚ましく、特にCLIベースのツールは開発ワークフローを根本的に変革しています。今回は、現在最も注目されている2つのAIコーディングCLI「Gemini CLI」と「Claude Code」について、実際に使用した感想を交えながら詳細に比較していきます。
- 2025年のAIコーディング戦国時代
- 基本性能・機能比較
- 実際の使用感・パフォーマンス
- コスト・価格体系
- 特殊機能・統合性
- 実用性・ワークフロー統合
- 将来性・発展可能性
- 私の結論:用途別推奨
- 最終的な判断
2025年のAIコーディング戦国時代
Gemini CLIの登場による市場の変化
2025年6月25日、GoogleからオープンソースのAIエージェント「Gemini CLI」が発表されました。これは単なる新ツールの登場ではなく、AI開発ツール市場における大きなパラダイムシフトを意味します。Gemini 2.5 Proモデルを搭載し、100万トークンという広大なコンテキストウィンドウを活用できるこのツールは、個人のGoogleアカウントがあれば1分あたり60リクエスト、1日1,000リクエストまで無料で利用可能という驚異的な条件を提示しています。
Claude Codeの確立された地位
一方、Anthropic社のClaude Codeは2025年5月に正式リリースされ、Claude Opus 4モデルを基盤とした強力なコーディング能力で開発者の注目を集めています。特に長時間にわたる複雑なタスク処理能力と高度な文脈理解力が評価されており、「従来45分以上かかる作業を一度の指示で完了させる」といった実績も報告されています。
基本性能・機能比較
技術仕様の違い
Gemini CLIは、Gemini 2.5 Proモデルを活用し、100万トークン(将来的には200万トークン)という巨大なコンテキストウィンドウを提供します。ターミナル直接アクセス、ファイルシステム操作、Google検索統合、YouTube・Driveとの連携機能を備えており、自然言語インターフェースでコーディングからシステムタスクまで幅広く対応可能です。
Claude Codeは、Claude Opus 4とSonnet 4モデルを使用し、特にコーディングタスクに最適化されています。SWE-benchで72.5%という驚異的なスコアを記録し、深い文脈理解とエージェント的な自律性を特徴としています。
コード生成・編集能力
私の使用経験では、両ツールともに高い品質のコード生成が可能ですが、アプローチに明確な違いがあります。
Gemini CLIは、プロジェクト全体を俯瞰した包括的なコード生成に優れています。100万トークンのコンテキストウィンドウにより、大規模プロジェクトの全体像を把握しながら一貫性のあるコードを生成できます。Google検索との統合により、最新の技術情報を参照しながらコード生成を行うことも可能です。
Claude Codeは、より精密で自律的なコード編集に特化しています。複数ファイルにまたがるリファクタリングや、Git操作を含む包括的な開発ワークフローの自動化が得意です。特に「vibe coding」と呼ばれる対話型開発スタイルにおいて、その真価を発揮します。
実際の使用感・パフォーマンス
速度・応答性
実際のベンチマークテストでは、興味深い結果が得られています。同じDiscord botの実装タスクを両ツールに与えた比較では、Claude Codeが72秒で完了したタスクに対し、Gemini CLIは165秒を要しました。この差は主に以下の要因によるものです:
デバッグ・エラー処理
デバッグ能力においても両ツールで特色が異なります。Claude Codeは初期段階でデバッグログを仕込むなど、プロアクティブなアプローチを取る傾向があります。一方、Gemini CLIは非常に丁寧な対応を心がけ、ユーザーを「お客様」のように扱う性格を持っていますが、バグ解消までのやり取り回数が多くなる傾向があります。
コスト・価格体系
Gemini CLIの圧倒的コストアドバンテージ
Gemini CLIの最大の魅力は、その破格の価格設定です。個人のGoogleアカウントで1日1,000リクエストまで無料利用可能という条件は、実質的に「無制限」と言えるレベルです。100万トークンで巨大プロジェクトも一括処理でき、追加コスト\$0でコーディング効率を25倍向上させることが可能です。
Claude Codeの課金体系
Claude Codeは従量課金制またはサブスクリプション制を採用しています:
- API従量課金:数ドル〜数十ドル/月(使用量による)
- Claude Max 5×:\$100/月
- Claude Max 20×:\$200/月
実際の使用では、少し込み入った作業ですぐ制限に達してしまい、WebのClaudeと使用量を共有するため、実質的にさらに制限が厳しくなる現実があります。
特殊機能・統合性
Gemini CLIの独自機能
Gemini CLIは、Google エコシステムとの深い統合が大きな特徴です:
Claude Codeの企業向け機能
Claude Codeは、エンタープライズ環境での使用を念頭に置いた機能を提供しています:
実用性・ワークフロー統合
開発スタイルによる使い分け
私の経験上、両ツールは異なる開発スタイルに最適化されています。
Gemini CLIは「オールマイティなAIターミナルアシスタント」として、幅広い用途に対応します。新しいプロジェクトの立ち上げや、大規模なアーキテクチャの変更、調査業務などで威力を発揮します。Google検索との統合により、最新技術の調査とコード実装を同時に行えるのは大きな利点です。
Claude Codeは「純粋なコーディングエージェント」として、既存プロジェクトの改善や複雑なリファクタリングに特化しています。特に「vibe coding」スタイル、つまり詳細な仕様を考えずに自然言語で指示を出して開発を進めるスタイルにおいて、その自律性が真価を発揮します。
IDE・エディタ統合
両ツールともVS Codeとの統合を提供していますが、アプローチが異なります:
Gemini CLIは、Gemini Code Assistとして既存のIDEワークフローに組み込まれます。ターミナルベースでありながら、IDEとの連携も可能な柔軟性を持っています。
Claude Codeは、より深いIDE統合を提供し、JetBrainsやVS Codeとのシームレスな連携を実現しています。
将来性・発展可能性
オープンソース vs プロプライエタリ
Gemini CLIはオープンソース(Apache 2.0ライセンス)として公開されており、コミュニティ主導の発展が期待できます。一方、Claude Codeはプロプライエタリソフトウェアとして、Anthropicの戦略的投資により発展していきます。
モデルの進化
両ツールとも背後にある言語モデルの継続的改善により、性能向上が期待できます。Gemini 2.5 Proは今後200万トークンへの拡張が予定されており、Claude Opus 4も継続的なアップデートが行われています。
私の結論:用途別推奨
Gemini CLIを選ぶべき人
- コスト重視の個人開発者:無料で高性能なAIアシスタントが必要
- 調査・研究業務が多い開発者:Google検索統合を活用したい
- 新規プロジェクト立ち上げが多い:大規模コンテキストを活用したい
- マルチモーダル開発:画像からコード生成などの機能が必要
Claude Codeを選ぶべき人
- 企業・チーム開発:セキュリティ・コンプライアンス機能が必要
- 既存コードベースの改善:高度なリファクタリング能力が必要
- vibe coding愛好者:自然言語での開発スタイルを好む
- 予算に余裕がある:高品質なサービスに対価を払える
最終的な判断
2025年現在、両ツールはそれぞれ異なる強みを持つ優秀なAIコーディングアシスタントです。Gemini CLIは「民主化されたAI開発ツール」として、より多くの開発者にAIの恩恵をもたらす可能性を秘めています。一方、Claude Codeは「プロフェッショナル向けの精密ツール」として、企業環境での実用性に優れています。
私としては、まずGemini CLIを試してみることをお勧めします。無料で利用できるため、リスクなくAI支援開発の世界を体験できます。その後、より高度な機能や企業環境での利用が必要になった段階で、Claude Codeの導入を検討するのが現実的なアプローチでしょう。
AIコーディングツールの進化は止まることがなく、これらのツールは私たちの開発体験を根本的に変革していくはずです。どちらを選ぶにせよ、この技術革新の波に乗り遅れないよう、積極的に新しいツールを試していくことが重要だと考えています。